治療方法「薬物療法」
治療方法「薬物療法」
1.抗うつ薬が必要なわけ
うつ病に用いられる薬にはさまざまありますが、抗うつ薬が中心に使われます。
抗うつ薬を服薬されている患者さまに対して、私たち薬剤師も「少し症状が良くなったからといって自己判断して薬をやめないでくださいね」とお伝えします。 ではなぜ抗うつ薬は、抗生物質や胃腸薬のように短期間の服薬では済まないのでしょうか? それを理解する鍵は、下に述べる病気のタイプにあります。
- 「器質性疾患」→「体内に侵入したり生じたりした異物」が原因で起こる病気(かぜ・胃腸炎など)
- 「機能性疾患」→「体の機能の一部が正常に働かないこと」が原因で起こる病気(糖尿病・高血圧等の生活習慣病、うつ病など)
病気のタイプによって、治療に用いられる薬の役割も異なります。
かぜや胃腸炎などの「器質性疾患」は、病気の原因となっている「異物」を取り除けば改善します。治療薬はそのような働きをもつものが使われます。
一方、生活習慣病を代表とする「機能性疾患」は、体の崩れた機能を補強・調整することで改善します。したがって健康のバランスを維持するために薬は欠かすことができません。当然、服薬する期間は器質性疾患に比べて長くなるわけです。
2.抗うつ薬の働き
うつ病も生活習慣病と同じく「機能性疾患」であり、脳神経の一部の機能が正常に働かなくなることによって症状が現れる病気です。抗うつ薬は脳神経の病的部位に作用して、神経の機能が正常に働くよう補助しています。
もう少し詳しく説明すると、意欲や不安といった感情に関与している神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の不足がうつ病の原因ではないかと考えられています。そこで下図のように抗うつ薬が働き、これらの神経伝達物質を正常な量(状態)へと調整するのです。
ただし、薬は神経の性質そのものを治すわけではないので、神経の機能が正常に回復するまでは「服薬の継続」が必要です。また、過剰なストレスは神経機能の回復を妨げますから、心身をゆっくり休めることも重要です。
3.抗うつ薬の副作用
- よく発症するもの
口渇、便秘、かすみ目、眠気、めまい、立ちくらみ、頻脈、発汗 - ときどき発症するもの
排尿困難、吐き気、食欲低下、体重増加、手指のふるえ - まれに発症するもの
発疹、けいれん発作、不整脈。パーキンソン症状など
どんな薬でも何らかの副作用がありますが、医師の指示通り服用すれば安全性に問題はありません。もし副作用があらわれても、薬の減量や変更、もしくは副作用止めの服薬によって症状を抑えることができます。
4.うつ薬の投与量について
薬の量は病気の状態のほか、年齢、性別、体格、体質などを考慮して決められます。また、薬は同じ量でも人によって効きかたが異なるので、他の人にあげてはいけません。
5.その他(特にお伝えしておきたいこと)
- 服薬により病状は改善しますが、その効果の発現には2週間程度かかります。
- 自己判断による服薬の減量や中止は再発を招きかねません。症状が改善しても医師からの指示を守って服薬してください。
- 抗うつ薬は長期服用しても依存性や習慣性が少ない、安全なお薬ですからご安心ください。これは抗不安薬や睡眠薬なども同様です。